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一生モノのジャズ名盤500 (小学館101新書) [新書]
ジャズ喫茶の多くが閉店してしまった中で、今もなお営業を続ける老舗、四ツ谷「いーぐる」の店主、後藤氏の新著。
「『聴いた感じ』から分類」というとずいぶん感覚的じゃないかとも思われそうだが、「ビバップ」「新主流派」といったジャズのジャンル分けに馴染みのない初心者にはむしろわかりやすいだろう。
500枚の中には数十年前に録音された超定番・名盤から、近年の演奏まで含まれている。ジャズ喫茶という現場で、60年代からリアルタイムでジャズを聴き続けた筆者ならではの選盤だ。
本著で紹介されているアルバムには、一般的なジャズファンの感覚から言って相当の「キワモノ」が含まれているから、読者がそのすべてを気に入るとは限らない。一枚でも気に入ったものがあれば、それをとっかかりにして広げていけばよい、というのが筆者が提案する聴き方である。『ワルツ・フォー・デビー』が気に入ったらドン・フリードマンの『サークル・ワルツ』も聴いてみればいいだろうし、ハービー・ハンコックの『処女航海』が気に入ったならボビー・ハッチャーソンの『ハプニングス』を聴いてみればいい。こうした聴き込み方はジャズの楽しみ方として至極真っ当かつ正当なのだが、それを取り入れた入門書は今までに少なく、その意味で本著は画期的であると思う。
「ジャズ」と一口に言ってもそのスタイルや「聴いた感じ」は様々である。それがジャズのおもしろいところであり、ジャズ初心者が抵抗を感じるところでもあるわけだから、とりあえず十数枚聴いてみてください、というのは親切な構成であると思う。「キワモノ」を含む、とは言ったが、いずれもレベルの高い演奏ばかりであり、少なくとも各章の最初に紹介されているアルバムは、聴いておいて損することはない。逆に言えば、それらのアルバムを数回聴いて何も感じなかったのであれば、ジャズ以外の音楽を聴いた方がよい。
メンバーや録音日のデータが併載されていないのが気になったが、巻末にまとめて掲載してある。おそらく数字やアルファベットの羅列に尻込みしてしまうジャズ初心者向けの配慮だろう。
ジャズ初心者からマニアまでお勧めできる、良著であると感じた。
18のグループに500枚のアルバムを分類。「新・ジャズに浸ろう」って、タイトルを見ただけでは、何のことやらよう判りませんが、著者が書いているとおり「聴いた感じ」としか言いようがないのでしょうね。
ジャズ喫茶のお客さんから「今かかっている演奏に似た感じのアルバムを教えてほしい」と要望されることが多いとか、「ジャズ耳を鍛える」というのも、(これも感覚的なものですが)判るように思います。
500枚という枚数はすごいですが、後藤氏のこれまで書いてきた著作と、表現までよく似たダブリもけっこうあるので、星4つとします。が、巻末の「アーティスト別データ&索引」も丁寧ですし、第1章「これがジャズだ!」は、休日の朝イチに聴くリストとして重宝しています。
現在、ジャズサクックスを習っているおじざんですが、CD購入するにあたり「一生モノのジャズ名盤500」を参考に、とりあえず各ジャンルの5番目くらいまでは購入(図書館から借りる場合もある)する計画です。
著者の感覚は私も同感する部分が多く、非常に参考になります。